JR西日本 大阪近郊の主要路線には、アーバンネットワーク運行管理システム 通称:SUNTRAS (Safety Urban Network TRAffic System) サントラス が導入されています。

運行管理システムとは、CTC装置、旅客案内装置などを一括管理・制御するシステムのこと。
CTC(Centralized Traffic Control)とは 列車集中制御のことで、信号機の制御状態、列車番号、列車位置情報などを CTCセンターに集中し、これまで駅で行っていた運転状況の監視、進路制御などを一括して行うことです。

1993年に 阪和線システムが導入され、その後 2002年~2011年にかけて、JR京都・神戸線システム大阪環状・大和路線システム
JR宝塚・JR東西・学研都市線システム が順次 導入されました。

2013年9月に 阪和線システムが2代目のものに更新されて以降、次はどの路線に導入されるのか気になっていましたが、2014年10月29日、JR西日本は 山陽本線 上郡~三原駅間に運行管理システムを導入する と発表しました。

【JR西日本 ニュースリリース】
山陽本線への新たな運行管理システムの導入について


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これまで、山陽本線の上郡~三原駅間にCTCが導入されていないということは知っていましたが、まさか運行管理システムを導入するとは驚きました。

使用開始は2016年の春。 今から1年以上先です。
「スケジュールが整ったので、概要についてお知らせする」 とのことですが、今後導入する運行管理システムについて、JR西日本が事前に告知するのは初めてではないでしょうか?

両端の上郡・三原の駅構内は、今回の運行管理システムの範囲に含まれません。
(上郡駅は近畿統括本部の管轄で JR京都・神戸線システムが導入済み、三原駅は広島支社の管轄)


ニュースリリースの 「システム導入による改善点」 で挙げられている3つの事項
①お客様案内の充実、②ダイヤ乱れの早期回復、③保守作業の安全性向上 のうち、ここでは ①について書いていきたいと思います。


運行管理システムが導入されると、ホームで流れる自動放送や、ホームや改札のところに設置されている電光掲示板(以下:発車標)の表示が変わります。

現在、岡山支社管内(岡山・福山エリア) の駅のホームで流れている自動放送は、「まもなく、○番のりばに 列車がまいります。危ないですから、黄色い点字ブロックまでお下がりください」 というように、列車の停車・通過に関係なく 列車の接近だけを知らせ、列車の種別や行先は案内しません。

列車の遅れに関する情報は 駅員による案内放送が頼りでした。

運行管理システムが導入されると、詳細な自動放送が流れるようになり、種別や行き先のほか、乗車位置や 快速の停車駅、遅れといった情報なども 自動で案内されます。

ダイヤが乱れた時でも、案内表示や放送内容の変更を システムが自動で行うのです。



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※JR西日本の運行管理システム導入路線に設置されている発車標の例。
(写真は JR宝塚線 新三田駅で撮影)


発車標が設置されていない駅では、次に来る電車の種別や行き先・発車時刻を知るのに、駅に掲示されている時刻表を見なければなりません。

岡山・福山エリアでは、発車標が設置されている駅が非常に少なく、2014年現在、両端の上郡・三原を除いた山陽本線の区間(三石~糸崎駅間)で ホームや改札口に発車標が設置されているのは 岡山・倉敷・福山の3駅だけ。

当駅始発・終着の電車が多い糸崎駅をはじめ、主要都市の中心駅である尾道駅・笠岡駅、赤穂線との分岐駅である東岡山駅や、新幹線停車駅の新倉敷駅にも 発車標が設置されていないのです。


運行管理システムの導入に伴い、瀬戸~糸崎駅間の全駅に発車標が設置されます。

んんん??? 瀬戸から!?

どうやら、今回の運行管理システム導入区間のうち、三石~万富駅間の各駅は 発車標が設置されないようです。

2011年の乗車人員を見ると、瀬戸駅が2451人なのに対し、三石駅は212人、吉永駅は468人、和気駅は1322人、熊山駅は1378人、万富駅は652人と、いずれも2000人未満だったので 発車標の設置が見送られたのかもしれません。

とはいっても、岡山方面から来る電車の半数が和気駅で折り返しているので、せめて和気駅までは 発車標設置の対象区間に入れてほしかったと思いますね。


また、赤穂線 西大寺駅についても、発車標を同時に整備するとのこと。

岡山市東区 西大寺地区(旧・西大寺市)の中心駅であり、2011年の乗車人員も3074人と、赤穂線 播州赤穂~東岡山駅間の途中駅で最も多いことから、発車標の設置が決まったのでしょう。


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あと、岡山駅においては 特急列車の乗車口案内を設置し、乗車口を それぞれのドア位置の上方に表示する としています。
(写真は大阪駅で撮影。複数の特急列車用の例としてニュースリリースに挙げられています)


以上、「①お客様案内の充実」 について書いていきましたが、気になるのは、自動放送や発車標が どのようなものになるのかということです。

これまで、JR西日本 在来線の運行管理システムは 大阪近郊の路線(アーバンネットワーク)に導入されてきましたが、今回導入されるのは 岡山支社管内の路線。

したがって、SUNTRASではないのです。
そのため、これまでと違って 全く見当がつかないんですよね。

SUNTRASの放送は、大阪環状・大和路線システムを除き、男声は村山明さん、女声は よしいけいこさんが担当されていますが、岡山・福山エリアの運行管理システム導入路線も 村山・よしいペアになるかは分かりません。

特に村山さんは 2014年11月現在66歳であり、年齢的にかなり厳しいのではないかと思います。

現在、岡山支社管内各駅の自動放送を担当されている、男声:片山光男さん、女声:河本俊美さんが そのまま新放送を担当されるのか、それとも 全く聞いたことのない声になるのか・・・


発車標についても、SUNTRAS導入路線と同じになるとは限りません。
小規模な駅に設置される発車標や 表示される文字のフォントなどが、これまでとは異なる可能性があります。


また、電車の到着・通過時に流れる接近メロディが どのようなものになるのかも注目です。

特に、岡山駅・倉敷駅・笠岡駅・福山駅・尾道駅では、接近放送が他の駅と違って、「いい日旅立ち」 や 「汽車」、「線路は続くよどこまでも」 、「瀬戸の花嫁」 、「桃太郎」 、「がんばれカブトガニ」 、「百万本のバラ」 、「故郷」 、「われは海の子」 などといった 童謡や ご当地メロディが自動放送と共に流れるという仕様になっているのです。

運行管理システム導入による放送の変更で これらのメロディが聞けなくなるかもしれません。


そしてもう1つ気になるのは、赤穂線 西大寺駅が 「お客様案内の充実」 の対象駅に入っていること。
発車標だけでなく、放送も運行管理システム対応のものになると思われます。

赤穂線の東岡山~西大寺駅間も 運行管理システムの導入範囲に入るとは、ニュースリリースのどこにも書いてありません。
西大寺駅が 山陽本線の飛び地のようになるということでしょうか。
これまた謎ですね・・・。


前回の阪和線システム更新の時は、使用開始が2013年9月でしたが、その10ヶ月前にあたる2012年11月の時点で、新しい発車標が設置され始めていました。
ひょっとすると、今回は 来年の3月~5月あたりから、各駅で発車標の設置が始まるのではないかと思います。

岡山・福山エリアで初となる運行管理システムの導入。 今後が楽しみですね!

最後に、現在 岡山駅・倉敷駅・福山駅のホームに設置されている発車標を ちょっとだけ紹介しておきます。


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岡山駅
1・2番のりばに設置されている発車標は、このような5段表示のタイプです。
のりばの矢印が出ない代わりに、行き先欄の隣に のりば番号が表示されます。
そのさらに右側には 横に長いスペースがあり、停車駅案内などがスクロール表示されます。

列車名欄には、路線名と乗車位置が交互に表示されます。
乗車位置表示は、日本語表示の時と英語表示の時とで 色が異なります。
(英語表示の時は、▲印は橙色→緑色に、●印は緑色→オレンジ色に変わります)

貨物列車の場合は、種別欄に 「貨物」と表示され、平常運転時、列車名欄には 「通過貨物列車」 、遅れて運転している時は 「遅れ通過貨物」 と表示されます。

列車が到着・通過する時は、1番下の段に 列車がまいります。ご注意下さい。 と表示されますが、これでは 1番のりば・2番のりば どちらに列車が来るのか分からないですね。

ちなみに、この駅では 当駅止まりの列車の案内が一切表示されません。


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倉敷駅
2・3番のりばに設置されている発車標は、3段表示のタイプ。
岡山駅と同様、行き先欄の右側に のりば番号が表示されます。
伯備線から岡山方面へ直通する列車は 隣のホーム・5番のりばから発車するため、このホームの発車標に その発車案内も表示されています。

岡山駅を越えて運転される列車は、列車名欄に (岡山駅経由) -Via Okayama と表示されます。
電車が到着する時は、列車名欄・時刻欄に 電車がまいります と表示されますが、SUNTRAS導入路線で見られる表示と異なります。

4・5番のりばに設置されている発車標は、4段表示のタイプ。
こちらは、種別欄・行き先欄の隣に のりば矢印が出ています。



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福山駅
この駅のホームに設置されている発車標は、2段表示のタイプ。
行き先欄の右側に両数と のりば番号が表示されます。
乗車位置は表示されません。
また、電車が到着する時の 「電車がまいります」 表示も出ません。

終点の糸崎・三原で 広島方面行きの電車に連絡する電車は、列車名欄に 「広島方面連絡」 と表示されます。
赤色の 「広島方面連絡」 は、三原駅で呉線の電車とも連絡します。

岡山駅を越えて運転される電車の場合は、列車名欄に 岡山 経由 と表示され、終点の岡山で相生行きの電車に連絡する場合は、相生行に連絡 と表示されます。



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ワンマン運転する福塩線の列車の場合、種別欄に ワンマン と表示されます。

井原鉄道 井原線直通の 「早雲の里荏原行き」 は、駅名が長すぎるので 「早雲荏原」 (英語表示は 「so-ebara」)と略して表示されますが、運行管理システムの導入で 窮屈な表示に変わるのか 気になるところですね。


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