今年(2015年)の春に開業する路線といえば、北陸新幹線 上野東京ライン が大きな話題になっており、北陸本線の金沢~直江津駅間、信越本線の直江津~長野駅間が第三セクター会社に移管されることも知られていますが、これらと同じ時期に誕生する 2つの地方鉄道をご存知でしょうか?

京都丹後鉄道」 と 「四日市あすなろう鉄道」 です。

今回は、この2つについて書いてみたいと思います。


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京都丹後鉄道(略称:「丹鉄」)

名前の通り、京都府の丹後地域を走る鉄道なんですが、「北近畿タンゴ鉄道」 が既にあるじゃないか! と思った方いらっしゃいませんか?

2015年4月1日から 北近畿タンゴ鉄道の路線を京都丹後鉄道が引き継いで運行するのです。

京都丹後鉄道 公式ホームページ


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※写真は 京都駅で撮影した 特急 「はしだて」。 北近畿タンゴ鉄道のKTR8000形気動車です。

北近畿タンゴ鉄道(以下:KTR)は、京都駅まで直通する特急列車も運行しており、どちらかといえば儲かっていそうなイメージを持ってしまいますが、実は 第三セクター鉄道の中で 最も赤字額が大きいのです。

2013年度は 過去最多の約8億9千万円
赤字は20年以上続いており、これまで 京都府・兵庫県と沿線自治体から 毎年4~5億円の補助金を受けて 経営を維持してきました。

この経営改善策として採用されたのが、運行を民間の事業者に委ね、鉄道施設をKTRが保有・管理する 「上下分離方式」 。
公募の結果、高速バス会社のWILLER ALLIANCE(ウィラー・アライアンス)が選ばれました。

その子会社のWILLER TRAINS(ウィラー・トレインズ)がKTRから鉄道施設を借りて 列車を運行することになります。
「京都丹後鉄道」 というは社名ではなく、鉄道通称名なのです。

運行会社の変更に合わせて、KTR宮津線・宮福線の7駅で駅名が変更されます。

※変更前→変更後、( )内は愛称

①厚中問屋→福知山市民病院口
②野田川
(美心(うつくしごころ)与謝野)→与謝野
③丹後大宮
(小町の里)→京丹後大宮
④木津温泉
(橘の里 夕日ヶ浦)→夕日ヶ浦木津温泉
⑤丹後神野
(日間の松原小天橋)→小天橋
⑥甲山
(摩須郎女の里かぶと山)→かぶと山
⑦但馬三江
(コウノトリの郷)→コウノトリの郷


①は、福知山市民病院の最寄駅であることを示すため。
②は、与謝野町の中心駅であることを示すため。
(ちなみに、野田川駅は 旧・野田川町の中心駅。与謝野町は与謝郡の3町が合併して誕生)
③は、京丹後市に位置することから。
④は、付近に 木津(きつ)温泉のほか、夕日ヶ浦温泉もあるため。
(夕日ヶ浦は、日本の夕陽百選にも選ばれた夕日の名所)
②、⑤、⑥、⑦は、愛称を正式名称化した といったところでしょうか。

また、""津と ""知山を結ぶ 宮福線 に倣って、
宮津線の西舞鶴~宮津駅間を 「宮舞(みやまい)」、宮津~豊岡駅間を 「宮豊(みやとよ)」 と名付け、宮津と どこを結ぶ路線なのか 分かりやすくするとのこと。

直通先のJR西日本と合わせて 3月14日にダイヤ改正が行われるため、4月以降も そのダイヤを引き継いで運行されます。
なお、運賃は 現行のまま変わらないようです。


四日市あすなろう鉄道

名前の通り、三重県四日市市を走るのですが、四日市市内のみを走る路線といえば、近鉄内部線・八王子線 がありますよね。


2015年4月1日から 近鉄内部・八王子線が四日市あすなろう鉄道に経営移管されるのです。

近鉄内部線と八王子線といえば、同じく近鉄から移管された三岐鉄道北勢線と共に 線路幅が 一般的な線路よりも狭い762mmという 特殊狭軌 「ナローゲージ」 であることで知られています。

しかし、特殊であるが故の問題点がいろいろあるんですよね・・・。


①維持費が高い

近鉄内部・八王子線の年間利用者数は 1970年度の722万人をピークに減少が続き、2011年度には ほぼ半分の363万人にまで落ち込みました。

その一方で、特殊な軌間を採用していることから 通常の鉄道より維持費が高く、ここ10年ほど毎年3億円弱の赤字が続き、近鉄の経営を圧迫しているのです。


②車両の更新が難しい&老朽化が深刻

近鉄内部・八王子線は、他の近鉄路線と線路幅が異なるため、車両を更新するには 内部・八王子線専用の新型車両を製造しなければなりません。

ところが、赤字で利用客の少ない内部・八王子線に 近鉄がそんな新型車両を出すことはできず、製造から30年以上経った車両を 今なお使い続けています。

古いものだと50年以上運用されており、もはや寿命が限界に近い状態です。

加えて、車体が小さいことから 未だに冷房車が存在しないという問題も抱えています。

そんなわけで、近鉄が内部・八王子線の廃止(バス路線に転換)を提案したところ、四日市市が鉄道の存続を要望したため、協議の結果、2015年春から 近鉄と四日市市の出資する新しい鉄道会社が 内部・八王子線の運行を担うことになりました。

近鉄と四日市市曰く、社名の 「あすなろう」 には、「未来への希望(明日にむかって)や、内部・八王子線の特徴であるナローゲージ、将来にわたり市民の皆様とともに育てていく鉄道」 という思いを込めたとのこと。

四日市市が 内部・八王子線の鉄道施設を保有し、四日市あすなろう鉄道が 施設を無償で借りて列車を運行するという、いわゆる 「公有民営方式」 での存続となります。

これは、同じく近鉄から経営移管された伊賀鉄道や養老鉄道と大きく異なるところです。
(この2社は 近鉄が鉄道施設を保有)

なお、経営移管に合わせて、運賃が値上げされるほか、近鉄四日市駅の内部・八王子線の駅舎が、「あすなろう四日市駅」 として分離されることになります。
(ちなみに、近鉄四日市駅では 近鉄名古屋線・湯の山線の高架ホームと内部・八王子線の地上ホームとで 駅舎がそれぞれ独立しており、乗り換えには 一度改札を出る必要があります)


以上、「京都丹後鉄道」 と 「四日市あすなろう鉄道」 について書きました。

自分は 北近畿タンゴ鉄道も 近鉄内部・八王子線も まだ乗ったことがありません。
一度は乗りに行きたいと思うのですが、他に優先したいことが多いこともあって なかなか行けず・・・。
この記事で写真を紹介できなくて、すみません。

個人的に、北近畿タンゴ鉄道が 京都丹後鉄道に変わるのが ちょっとショックでした。
KTR自体は 鉄道施設を保有・管理する会社として残るのですが、「北近畿タンゴ鉄道」 という慣れ親しんだ鉄道名は 実質的に消滅するのですから。

4月から新しい運行会社のもと 再出発する これらの路線。
今後どのように生まれ変わるのか、注目ですね。

変わる前に行くも良し、変わってから行くも良し、
まだ乗ったことのない人(自分含む)は 一度乗りに行ってはいかがでしょうか?


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