2016年9月28日、JR西日本が公式ホームページに 「データで見るJR西日本2016 」 を掲載。

その中の 「P.56-59 区間平均通過人員および旅客運輸収入(PDF形式 1,087KB)」 に、2015年度のJR西日本 全路線の
区間別平均通過人員が記載されていました。


「平均通過人員」 とは、いわゆる 「
輸送密度」 のこと。

1日1kmあたりの利用客数を表しており、以下の計算によって算出されます。

【輸送密度(平均通過人員)】 ※単位は 「人 / 日
=【各路線の年度内の旅客輸送人キロ】÷【当該路線の年度内営業キロ】÷【年度内営業日数】

※「人キロ」は、利用客数と その利用客を輸送した距離(km単位)を掛け合わせたもの。
1人を1km輸送した輸送量が1人キロとなり、例えば30人を10km輸送した場合は30人×10km=300人キロとなります。



1980年代、輸送密度が4,000未満の国鉄・JRの鉄道路線(いわゆる 「特定地方交通線」)は、「鉄道がもつ大量輸送機関としての特性が発揮できず バスへの転換が妥当」と判断され、代替輸送道路が未整備などといった一部の例外を除き、廃止(代替バスや第三セクター鉄道などに転換)されました。

今回、JR西日本が公表した各路線の輸送密度のうち、一昔前であれば廃止されていたかもしれない 輸送密度が4,000未満の鉄道路線について まとめてみました。

緑色は北陸地方、青色は近畿地方、赤色は中国地方の線区。
※★マークは特急が走っている線区。
※( )内の数字はJR西日本発足当初(1987年度)の輸送密度。(路線単位の輸送密度のみ公表)


広告


【輸送密度が2,000以上4,000未満】

★因美線  智頭~鳥取  31.9km ・・・ 3,773

★山陰線  福知山~城崎温泉  69.5km ・・・ 3,712

津山線  津山~岡山(全線)  58.7km ・・・ 3,616(4,542)

紀勢線  和歌山~和歌山市  3.3km ・・・ 3,575

★舞鶴線  東舞鶴~綾部(全線)  26.4km ・・・ 3,221(5,965)

山陰線  小串~幡生  23.6km ・・・ 3,126

草津線  柘植~貴生川  15.3km ・・・ 2,996

和歌山線  高田~五条  23.9km ・・・ 2,792

城端線  高岡~城端(全線)  29.9km ・・・ 2,787(4,479)

呉線  三原~広  60.2km ・・・ 2,665

氷見線  高岡~氷見(全線)  16.5km ・・・ 2,582(4,416)

境線  米子~境港(全線)  17.9km ・・・ 2,554(3,022)

宇部線  新山口~宇部(全線)  33.2km ・・・ 2,520(5,568)

赤穂線  播州赤穂~長船  31.8km ・・・ 2,215

★高山線  猪谷~富山  36.6km ・・・ 2,178(2,556)




輸送密度が2,000以上4,000未満で廃止された路線は、

JR西日本の能登線  穴水~蛸島  61.1km ・・・ 2,045(1988年3月25日廃止。 のと鉄道能登線に転換したが、それも2005年4月1日に廃止)

宮津線  西舞鶴~豊岡  83.6km ・・・ 3,120 (1990年4月1日廃止、北近畿タンゴ鉄道に転換。2015年4月1日以降、WILLER TRAINS(京都丹後鉄道)と北近畿タンゴ鉄道による上下分離方式)

大社線  出雲市~大社  7.5km ・・・ 2,661 (1990年4月1日廃止)

JR東海の岡多線  岡崎~新豊田  19.5km ・・・ 2,757(1988年1月31日廃止、愛知環状鉄道に転換) 

などがあります。


これらと同じ水準の線区だけで 15もありました。

岡山への通勤路線である津山線や 赤穂線の兵庫県と岡山県の県境を跨ぐ区間、旧・北陸本線(現・あいの風とやま鉄道)から分岐した富山県内のJR 3路線、紀勢線の和歌山と和歌山市を結ぶ区間、呉線の広駅以東、山陰線の下関地区などが入っています。

草津線や和歌山線といった京阪神地区のローカル線や、因美線・山陰線・舞鶴線・高山線といった特急列車が走る路線もありますね。


JR西日本発足当初の輸送密度が出ている路線は 軒並み減少。

かつては4,000を上回っていたのに、2,000台や3,000台にまで減少した路線が多いです。

特に宇部線は 5,568→2,520  と半分以下に激減しています。


ちなみに、宇野線 茶屋町~宇野(17.9km)は4,008
伯備線 新見~伯耆大山(74.0km)は4,009で、ギリギリ4,000を超えました。

七尾線 津幡~和倉温泉(59.5km)は4,807
福知山線 篠山口~福知山(48.1km)は4,519
山陰線 園部~福知山(54.3km)は6,292となっています。




【輸送密度が1,000以上2,000未満】

加古川線  厄神~谷川  41.1km ・・・ 1 ,884

芸備線  三次~狩留家  48.2km ・・・ 1,503

★播但線  寺前~和田山  36.1km ・・・ 1,409

★紀勢線(きのくに線) 新宮~白浜  95.2km ・・・ 1,392

★山陰線  出雲市~益田  129.9km ・・・ 1,346

岩徳線  岩国~櫛ケ浜(全線)  43.7km ・・・ 1,330(3,342)

関西線  亀山~加茂  61.0km ・・・ 1,267

小浜線  敦賀~東舞鶴(全線)  84.3km ・・・ 1,096(2,712)




輸送密度が1,000以上2,000未満で廃止された路線は、

国鉄の北条線  粟生~北条町 13.8km ・・・1,609 (1985年4月1日廃止、北条鉄道に転換)

伊勢線  河原田~津  22.3km ・・・1,508 (1987年3月27日廃止、伊勢鉄道に転換)

三木線  厄神~三木  6.8km ・・・ 1,384 (1985年4月1日廃止。三木鉄道に転換したが、それも2008年4月1日に廃止)

倉吉線  倉吉~山守  20.0km ・・・1,085 (1985年4月1日廃止)

JR西日本の鍛冶屋線  野村(現在の西脇市駅)~鍛冶屋  13.2km ・・・1,961(1990年4月1日廃止)

信楽線  貴生川~信楽  14.8km ・・・1,574(1987年7月13日廃止、信楽高原鐵道に転換)

若桜線  郡家~若桜 19.2km ・・・ 1,558 (1987年10月14日廃止、若桜鉄道に転換)

岩日線  川西~錦町 32.7km ・・・ 1,420 (1987年7月25日廃止、錦川鉄道に転換)

などがあります。


これらと同じ水準だったのが、上記の8線区。

広島への通勤圏内である芸備線 三次~狩留家や、播但線・関西線の非電化区間、岩国~徳山のバイパス線である岩徳線などが入っており、こちらも 紀勢線や山陰線といった特急が走る路線が含まれています。

上には書いていませんが、紀勢線のJR西日本区間全体(新宮~和歌山市)の輸送密度は 9,741→5,353 と、JR西日本発足当初から4,000以上減少しました。


加古川線は 加古川~厄神 と 厄神~谷川 の輸送密度が公表されていますが、区切るところおかしいと思います。

どうして西脇市ではなく厄神なんでしょうかね・・・。

西脇市~谷川は、運行本数が1日9往復(土休日は8往復)と非常に少ないので、輸送密度は1,000を下回っている可能性が高いです。

厄神~谷川 の輸送密度は1,884となっていますが、これは かつて西脇市駅から分岐していた鍛冶屋線(1,961)を下回っています。

西脇市駅は市街地の南外れにありますが、鍛冶屋線の西脇駅は 西脇市の中心部にあって利用客が多く、加古川線の多くの列車が鍛冶屋線へ直通して 西脇駅発着となっていました。
(鍛冶屋線の方が本線で、加古川線 野村(現・西脇市)~谷川の方が支線のような扱いでした)

もし鍛冶屋線が現在まで生き残っていたら 加古川線の利用客はもっと増えたのではないかと思うと、
廃止が本当に悔やまれますね。

ちなみに、加古川~厄神 の輸送密度は7,401ありました。


小浜線は、JR西日本発足当初の輸送密度が4,000を下回っていますが、「平均乗車キロが30kmを超え、輸送密度が1,000以上」 という理由で 廃止対象にはなりませんでした。



【輸送密度が500以上1,000未満】

姫新線  播磨新宮~上月  28.8km ・・・ 957

★山陰線  浜坂~鳥取  32.4km ・・・ 941

姫新線  津山~中国勝山<  37.5km ・・・ 875

★山陰線  城崎温泉~浜坂  39.9km ・・・ 826

★山口線  宮野~津和野  47.4km ・・・ 754

美祢線  厚狭~長門市(全線)  46.0km ・・・ 574(1,741)


ここからは、輸送密度が3ケタの線区を見ていきます。

500以上1,000未満だったのは 上の6線区です。


姫新線の播磨新宮~上月が まさかの3ケタ!

姫路~播磨新宮(22.1km)は6,918だったので、その7分の1にも満たないことになります。

上月駅までは 姫路への通勤圏内ですが、播磨新宮駅を境に 利用客数に大きな差があることが分かりますね。


山陰線 城崎温泉~浜坂の輸送密度の低さに驚きました。

福知山~城崎温泉(3,712)の4分の1以下であり、兵庫県と鳥取県の県境を跨ぐ 浜坂~鳥取(941)をも下回っています。


美祢線は、JR西日本発足当初の輸送密度が4,000を下回っていますが、こちらは かつて石灰石などの貨物輸送が多かったために地方交通線ではなく 「幹線」 に指定されたことから、廃止対象にはなりませんでした。

JR西日本発足当初の輸送密度には、1997年4月1日に廃止された大嶺支線(南大嶺~大嶺 2.8km)を含んでいるとはいえ、1,741→574 と3分の1以下に減っているのには驚きですね。



【輸送密度が100以上500未満】

越美北線(九頭竜線)  越前花堂~九頭竜湖(全線)  52.5km ・・・ 458(772)

小野田線  小野田~居能など(全線)  13.9km ・・・ 440(1,478)

姫新線  上月~津山  35.4km ・・・ 431

山陰線  長門市~小串、長門市~仙崎  52.8km ・・・ 412

★山口線  津和野~益田  31.0km ・・・ 411

姫新線  中国勝山~新見  34.3km ・・・ 328

山陰線  益田~長門市  85.1km ・・・ 300

芸備線  備後落合~三次  45.7km ・・・ 216

木次線  備後落合~宍道(全線)  81.9km ・・・ 215(663)

福塩線  府中~塩町  54.4km ・・・ 200

因美線  東津山~智頭  38.9km ・・・ 197

大糸線  南小谷~糸魚川  35.3km ・・・ 196(987)


2003年12月1日に廃止された可部線 可部~三段峡(46.2km)の輸送密度は492でした。

また、日本経済新聞の報道によると、JR北海道は 輸送密度が500未満の線区について、 「単独での維持が難しい」 として 沿線自治体と存廃に関する議論をする方針だそうです。

このように、輸送密度500未満は いつ廃止になってもおかしくない水準 だと言えるでしょう。

輸送密度100以上500未満だったのは、上の12線区。

姫新線や芸備線、木次線、福塩線、因美線といった中国山地の山間部のローカル線が多いです。

姫新線は、上月~津山 と 中国勝山~新見 の2線区が500未満に。

先ほどの500以上1,000未満のところに、播磨新宮~上月 と 津山~中国勝山が入っており、姫路~播磨新宮以外は全て輸送密度が1,000を下回りました。


山陰線の益田~長門市 と 長門市~小串(+仙崎支線)は、どちらも500を割り込んでおり、山口県 日本海側の鉄道利用者が非常に少ないことが分かります。

益田~長門市の区間では、県内屈指の観光都市である萩市を通るのですが、新山口駅から萩へ行く場合は 鉄道よりもバスの方が圧倒的に便利なので、観光客にほとんど利用されないというのが悲しいところです。
(鉄道だと山口線・益田経由か 美祢線・長門市経由と遠回りになる上、本数が少なく、乗り換えが最低でも1回は必要で、時間がかかる。 それに対し、バスは新山口駅⇔萩市内の直通便があり、速い)



山口線の津和野~益田は、特急列車が運行されているJR西日本の線区で唯一 輸送密度が500に届きませんでした。

宮野~津和野も754と3ケタになっており、宮野駅以北の利用客の少なさが伝わってきます。

個人的に、山口線は 山陽地方と山陰地方を結ぶ 「陰陽連絡路線」 の中で、伯備線や智頭急行線・因美線(智頭~鳥取)と並ぶ主要路線という印象だったのですが、山口と山陰地方を結ぶ特急 「スーパーおき」 は3往復しか設定されておらず、意外にも普通列車が主体のローカル線だったんですね。

ちなみに、新山口~宮野の輸送密度は6,318もありました。



山口県で輸送密度が低いJRの路線は、日本海側や山間部を走る路線だけではありません。

太平洋側にある小野田線も、輸送密度が500を下回っているのです。

小野田線は、居能~小野田の 「本線」 と 途中の雀田駅から分岐して長門本山駅に至る 「本山支線」 の2つで構成されていますが、本山支線は 1日3往復(朝6・7時台に2往復、夕方18時台に1往復)と本数が極めて少なく、輸送密度においては この支線が本線の足を引っ張っているのではないかと思います。


小野田線は JR西日本発足当初の輸送密度が4,000を下回っていましたが、「ピーク時の乗客が一方向1時間あたり1,000人を超す」という理由で 廃止対象になりませんでした。

しかし、JR西日本発足からの28年で 輸送密度は1,478→440 と3分の1以下に激減。

ここまで減ってしまっては、「ピーク時の乗客が一方向1時間あたり1,000人超」という条件もクリアできないでしょう。

本山支線どころか、小野田線全部が廃止対象になっても不思議ではありません。



木次線といえば、出雲横田~備後落合の区間が1日わずか3往復(トロッコ列車 「奥出雲おろち号」 を含めると4往復)という超閑散区間であることで知られていますが、全区間の輸送密度が215というのは 非常に厳しい数字です。

木次線は 国鉄時代から 輸送密度が4,000どころか1,000にも届いていませんでしたが、「代替輸送道路が未整備」 という理由で廃止を免れた経緯があります。

しかし、最大の難所だった出雲坂根~三井野原間で平行する国道314号が整備されたことで、「代替輸送道路が未整備」 という理由は解消されました。

三江線の廃止後は、この木次線が島根県と広島県を結ぶ唯一の鉄道となるわけですが、その木次線も 存続が危ぶまれている状況です。

ちなみに、出雲横田~備後落合の区間は中国地方きっての豪雪地帯ですが、あまりにも本数が少なすぎて、保線するよりもタクシーによる代行輸送の方が安く済むため、雪が降ると春まで長期間運休します。



福塩線は、途中の府中駅を境に様相が一変します。

福山~府中(23.6km)は 福山への通勤路線であり、輸送密度は6,806 もあります。

それに対し、府中~塩町は 1日6往復(朝3往復、午後3往復)しかない閑散区間。

輸送密度は200で、福山~府中の34分の1しかありません。

閑散区間の本数がもっと多ければ、三次駅⇔新幹線停車駅のアクセス路線として活用できそうな気がしますが、福山駅は 「のぞみ」 の多くが通過するのに対し、広島駅は全ての列車が停車するので、三次駅から わざわざ停車本数の少ない福山駅へ向かう人は ほとんどいないんだろうなと思います。



因美線も、途中の駅を境に様相ががらりと変わる路線です。

鳥取~智頭の区間は 特急 「スーパーはくと」 「スーパーおき」が運行され、智頭急行線と合わせて 京阪神地区⇔鳥取、岡山⇔鳥取を結ぶアクセス路線となっています。

一方で、智頭~東津山の区間は、かつては 津山線と合わせて 岡山⇔鳥取を結ぶ特急列車が走っていましたが、その役割を智頭急行線に奪われて以降は 津山と鳥取方面を結ぶローカル線となっています。

前者の輸送密度が3,773だったのに対し、後者は197

こちらも、かなり厳しい数字です。



中国地方のローカル線がずらりと並ぶ中、九頭竜線や大糸線といった北陸のローカル線も入っています。


九頭竜線は全線の輸送密度のみ公開されていますが、越前大野で区切って 越前花堂~越前大野 と 越前大野~九頭竜湖に分ければ、前者の輸送密度はもっと高く、後者の輸送密度はもっと低くなるでしょう。

後者は1日5往復しか運行されない超閑散区間。

しかし前者も1日9往復と、福井駅に乗り入れているにも関わらず、加古川線の閑散区間(西脇市~谷川)並みの本数です。

同じ北陸の城端線や氷見線と比べても、かなり少ないのが分かりますね。


大糸線 南小谷~糸魚川の輸送密度が500どころか200も下回っているとは驚きです。

糸魚川駅に北陸新幹線の駅ができたにも関わらず この値では、新幹線開通による効果がほとんどなかったと言われても仕方がありません。



【輸送密度が100未満】

芸備線  備中神代~東城  18.8km ・・・ 87

三江線  三次~江津(全線)  108.1km ・・・ 58(458)

芸備線  東城~備後落合  25.8km ・・・ 8


JR西日本で最も輸送密度が低い線区は、芸備線 東城~備後落合の区間。

この区間は1日わずか3往復しかない超過疎路線で、輸送密度は8

まさかの1ケタでした!

今年(2016年)12月に廃止される JR北海道の留萌線 留萌~増毛駅間の2014年度の輸送密度が39だったことを考えると、この 「輸送密度8」がいかに少ないのかがよく分かりますね。

バスどころか、タクシーによる代行輸送だけで十分なくらいの輸送量です。


ワースト3位には、同じく芸備線の備中神代~東城がランクイン。

さらに、先ほどの100以上500未満のところにも 備後落合~三次(216)が入っており、芸備線の三次駅以東は もはや末期的だと言わざるを得ません。

三次⇔新見の移動需要はあると思うのですが、芸備線は備後落合駅を経由するため、平行する中国自動車道に比べて 北へ大きく迂回しているのが致命的ですね。


このように 輸送密度が全国最低レベルの区間を擁する芸備線ですが、狩留家~広島の輸送密度が9,062もあるため、芸備線全体(備中神代~広島)の輸送密度は1,702となっています。

備中神代~三次が今日まで生き残っているのは 芸備線の一部だからであり(国鉄時代に廃止を免れた理由は 「ピーク時の乗客が一方向1時間あたり1,000人超」 )、芸備線とは別の路線だったら、間違いなく廃止されていたと思います。



ワースト2位には、2018年春に廃止されることが正式に決まった 三江線がランクイン。

先ほどのワースト1位と3位は、芸備線の 「一部の区間」 でしたが、こちらは 三次から江津までの路線全体で 輸送密度が58となっています。

これは、路線単位の輸送密度としては JR西日本はおろか、JRの運行中の全路線の中で最下位という 極めて少ない値です。

1日4往復と最も本数が少ない口羽~浜原の輸送密度は、おそらく 芸備線の東城~備後落合と同じくらいではないかと思います。


三江線は江の川に沿って結ぶ 「陰陽連絡路線」 として、1930年代から1975年までという 長い期間をかけて建設されました。

ところが、この 江の川が「へ」の字状に流れていて、北へ大きく迂回することから、三次⇔江津の短絡路としては全く機能していません。
(全線108kmですが、直線距離なら60km足らずです)

三次から島根県東部の出雲市・松江方面へ向かうのにも、県西部の浜田・益田方面へ向かうのにも、どちらも遠回りになってしまい、広島⇔出雲市・松江や 広島⇔浜田・益田といった長距離輸送には全く向いていないんですよね。

この路線、これまで廃止されずに生き残ってきたこと自体が奇跡だと思います。



以上、輸送密度が4,000未満のJR西日本の線区について書きましたが、80年代の 「特定地方交通線」 レベルの輸送密度しかない線区がこんなにたくさんあるとは驚きました。

もし、これらが全て廃止されたとしたら、JR西日本の在来線の鉄道網は 京阪神地区や岡山・広島近郊、山陽線や北陸線、きのくに線の白浜~和歌山、山陰線の鳥取~出雲市ぐらいしか残らないでしょう。


中でも特に目立つのは、中国地方のローカル線の大不振ぶりです。

中国山地の山間部を走る線区は、伯備線・津山線・芸備線の三次~広島を除いて、輸送密度が軒並み1,000を割り込んでおり、500未満の線区も少なくありませんでした。


近い将来、可部線 可部~三段峡や三江線に続く廃止路線が 次々と出てくるのではないかと思います。

輸送密度500未満の線区は全て廃止候補 と言っても過言ではないでしょう。

沿線の住民や自治体には、これらの線区が 「存続して当たり前」 ではなく、「このままでは廃止されるかもしれない」 という危機感を持ってほしいと思いました。



最後に、輸送密度が10万を超えているJR西日本の線区を簡単に紹介して、終わりたいと思います。


東海道線(JR神戸線) 大阪~神戸  33.1km ・・・ 390,684

東海道線(JR京都線) 京都~大阪  42.8km ・・・ 344,851

大阪環状線  天王寺~新今宮(全線) 20.7km ・・・ 286,475

山陽線(JR神戸線) 神戸~姫路、兵庫~和田岬  57.5km ・・・ 201,488

阪和線  天王寺~日根野、鳳~東羽衣  36.6km ・・・ 155,290

JR東西線  京橋~尼崎(全線) 12.5km ・・・ 120,850

東海道線(琵琶湖線) 米原~京都  67.7km ・・・ 120,836

山陽新幹線  新大阪~岡山  180.3km ・・・ 115,806

福知山線(JR宝塚線) 尼崎~新三田  36.9km ・・・ 100,731


広告