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※写真は 新大阪駅で撮影。


第25回参議院選挙は、本日(2019年7月21日)、投票日を迎えました。
滋賀選挙区では、改選数1に対し、嘉田由紀子 前・滋賀県知事ら 3人が立候補しています。

そんな嘉田前知事の最大の功績(?)といえば、滋賀県栗東市に設置する予定だった 東海道新幹線の新駅 「南びわ湖駅(仮称)」 を建設中止に追い込んだことでしょう。

今回は、そんな幻の新駅について 皆さんに思い出してほしい(知らない人には ぜひ知ってほしい) と思い、このブログで取り上げてみました。



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南びわ湖駅①


※以下、ウィキペディア の記事を参考に書いています。


南びわ湖駅は、東海道新幹線の米原~京都駅間(米原から約43.8 km、京都から約24.3 kmの場所)に建設されるはずでした。

この区間は、東海道新幹線で駅間距離が最も長く、68kmもあります。
東海道新幹線の駅間の平均距離が30 km程度ということを考えると、いかに長いかお分かりいただけるかと思います。
2016年に北海道新幹線が開業するまでは、日本の新幹線で最長の駅間距離だったとか。


計画開始当時、駅名の仮称は 「栗東駅」でしたが、1991年に琵琶湖線の栗東駅が開業したため、1996年に「びわこ栗東駅」に改称しました。
その後、2006年に5月に 「南びわ湖駅」 に再改称しています。
(個人的には 「びわこ栗東駅」 の方が好きでした。「南びわ湖駅」 はダサい・・・)


南びわ湖駅②

新幹線新駅は 草津線との交点付近から北側に離れた場所に設置される予定でした。

草津線の草津~手原駅間にも 新幹線新駅に接続する駅が設置される計画で、開業すると 両駅間を移動するのに およそ400mの距離を歩く必要があったんですよね。
(新幹線新駅の南端にも改札があれば約200mに緩和されます(新幹線ホームが全長約400m)が、建設費がさらに高くなるため設置されないことに)

そのため、緩和措置として 動く歩道が設置される予定でした。


南びわ湖駅の配線図

南びわ湖駅の駅構造は こんな感じ。


通過線を中央に、ホームをその外側に配置する形は、姫路駅など 多くの新幹線駅で見られますが、特徴的なのは 下りのみ島式ホームになっていることです。
最も外側の下り線は、停車列車の雪落としをする前提で、この部分のみJR東海が工事費を負担することになっていました。


滋賀県の説明によると、南びわ湖駅に停車する列車は、米原駅や岐阜羽島駅と同タイプを想定しており、1日に 「ひかり」 が36本、「こだま」 が31本の合計67本が停車すると見込んでいました。
(1時間に 「ひかり」 と 「こだま 」が、上り下りともにそれぞれ1本ずつ停車)


★滋賀県のホームページ★
 


2002年4月に新駅の設置が正式に決定し、2006年5月に着工しました。

しかし、その2ヶ月後の滋賀県知事選挙で、「もったいない」 を合言葉に 新駅の「限りなく中止に近い」 建設凍結を掲げた嘉田氏が、建設推進派の現職を破って当選したため、建設工事は中断。

JR東海との工事協定は白紙となり、2007年10月に新駅の建設中止が決定しました。



なぜ、知事選で 新駅の建設凍結を訴えた嘉田氏が多くの支持を得たのか。
そこには、南びわ湖駅特有の問題がありました。


①アクセスが不便で、しかも 「のぞみ」 が止まらない

南びわ湖駅は、滋賀県の動脈である琵琶湖線と直接の乗り換えができません

草津線とは乗り換えができるものの、前述の通り 草津線新駅から新幹線新駅まで400mもの距離を歩かなければならず、不便なんですよね。

新駅周辺以外の琵琶湖線沿線住民にとって、新幹線に乗るのに わざわざ草津線に乗り換えて 南びわ湖駅を目指すくらいなら、京都駅か米原駅へ出るでしょう。

特に京都駅は 全ての 「のぞみ」 が停車するので、東京や広島、博多といった遠隔地へ行くのに、南びわ湖駅に比べ 段違いに利便性が良いんですよね。

そのため、新駅を利用する住民は 実質的に駅周辺と草津線沿線しか見込めない というわけです。



②多くの利用が見込めない割に、建設費がものすごく高い

南びわ湖駅は 地元の要望により建設される「請願駅」で、滋賀県や栗東市などの地元自治体が 工事費をほぼ全額負担することになっていました。

その額、なんと238億2500万円!!!
(うち、滋賀県が116億9700万円、栗東市が100億9400万円を負担。残りを草津市など他の自治体が負担)

同じく請願駅だった東海道新幹線・掛川駅の建設費が約136億円であることを考えると、南びわ湖駅の建設費が異様に高いことが分かります。


なぜこんなに高くなってしまったのかというと、南びわ湖駅が建設される場所が高架ではなく 「盛土」 区間であり、線路下に駅舎を建設するのに 盛土を撤去する必要があったからです。

盛土を撤去している間も列車を運行できるよう、下り線の東側に「仮線」 を設ける計画でした。

この仮線の建設だけで、かなりの費用がかかったのだと思います。
(個人的に、線路下に駅舎を建設することにこだわらず、盛土を撤去せずに橋上駅舎を建設すれば、工事費を少しでも抑えられたのではないか・・・と考えてしまいますね)

※詳しくは、滋賀県のホームページ をご覧ください。



以上の結果、滋賀県民の多くが 「米原~京都駅間に新幹線の新駅はいらない」 「こんなものをつくるのに240億円もかけるなんてもったいない」 と思い、嘉田知事の誕生と 新駅の建設中止につながりました。


南びわ湖駅の建設予定地だった場所
※南びわ湖駅 建設予定地だった場所の現在の様子(地図)。
土地区画整理事業が行われる予定だった場所には、物流センターなどが建っています。



嘉田氏が初当選した知事選の時、自分にはまだ選挙権がなく、鉄道に興味もありませんでした。

あの知事選から13年が経ち、南びわ湖駅の建設中止が正式に決まってから12年が経とうとしている今、「南びわ湖駅の建設を中止して本当に良かったのだろうか・・・」 という思いがあります。

確かに、新駅に使う予定だった税金を 他のことに使うことができたという点で、財政上は それで大正解だったのかもしれません。
「米原~京都駅間に新幹線の新駅はいらない」 という主張も理解できます。


しかし・・・何でしょうね、このモヤモヤした気持ちは。

せっかくJR東海の協力を取り付け、着工までした新幹線新駅を建設中止に追い込み、新駅設置のチャンスを潰してしまったのは、それはそれで 「もったいない」 ような気がします。


南びわ湖駅は 2012年の開業を目指していたので、もし予定通りに建設されていたら、今から7年前に開業していたことになります。

「南びわ湖駅は絶対に必要。何としても建設するべきだった」 とまでは思いませんが、もし 南びわ湖駅が開業していたら、今頃どうなっていただろうか・・・ と考えてしまいますね。

新駅周辺には 新たな街並みができていたかもしれませんし、草津線に新駅が設置されていたかもしれません。

南びわ湖駅、この目で見たかったなぁ・・・。


琵琶湖線 草津~山科


琵琶湖線は、近江鉄道をはじめ 並走する私鉄が貧弱で、特に草津~石山駅間は 並走する私鉄が皆無という状況です。(近江八幡~草津駅間も、近江鉄道は琵琶湖線から遠く離れた貴生川の方へ行ってしまいますし)

もし南びわ湖駅があれば、琵琶湖線 草津~山科駅間が運転見合わせになっても、栗東市や草津市などにいる人が 京都・新大阪方面へ出ることができたでしょう。

琵琶湖線では、つい先日も河瀬~稲枝駅間で架線トラブルが発生し、米原~安土駅間で 6時間以上運転を見合わせましたし、2017年7月26日には 瀬田~石山駅間で22時32分頃に発生した架線トラブルで終日運休となり、翌朝まで影響が出る事態になっています。


また、長時間連続して多くの雨が降り続いた場合、線路や斜面に相当量の雨水を吸い込んでいるため、雨が止んだ後も水が引くのを待たなければならず、運転再開まで相当な時間がかかります。

新幹線は 多くの区間で高架を走っているので、在来線に比べ 雨の影響を受けにくく、運転再開も比較的早いです。

たとえ 南びわ湖駅の普段の利用者数が少なかったとしても、そこにあるだけで いざという時に役に立ったかもしれないのになぁ・・・と思います。


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※写真は 米原駅 新幹線ホームの駅名標。(2019年6月撮影)
南びわ湖駅が開業していたら、この駅名標も変わっていたでしょう。


前述の通り、「南びわ湖駅」 という駅名は仮称であって、正式な駅名ではありません。
そのため、もし開業していたら、別の駅名になっていたかもしれませんね。

新栗東駅」 だと普通すぎますし、「東栗東駅」 は 「東」 が2つも入って変な感じです。

自分が考える 仮称:南びわ湖駅の駅名は 「湖南栗東駅」 。

2016年3月に供用を開始した 名神高速道路の 「栗東湖南IC」 と対になるような名前です。
(新潟県の 上越新幹線 「燕三条駅」 と 北陸自動車道 「三条燕IC」 みたいな関係)


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※金沢駅に停車中の北陸新幹線(2015年3月撮影)


あと、「もし 南びわ湖駅が開業していたら、北陸新幹線の敦賀~京都駅間は 米原ルートになったはず」 といった意見を見かけましたが、それは違うと思います。

JR西日本が、他のルートに比べて建設費が安い米原ルートではなく、滋賀県を通らない 「小浜・京都ルート」 を主張したのは、東海道新幹線が過密ダイヤだから というのもありますが、一番の理由は 東海道新幹線がJR東海の管轄だから でしょう。

金沢~大阪駅間を結ぶ特急 「サンダーバード」 は 全区間でJR西日本の路線を通っていますが、もし米原ルートになれば、米原~新大阪駅間でJR東海の路線を通ることになり、その区間の収益をJR東海に持っていかれてしまいます。

国鉄民営化によって 米原~新大阪駅間の管轄が 在来線と新幹線とで別々になってしまったことが、北陸新幹線のルート選定に大きく影響したのであって、南びわ湖駅の有無は全く関係ないことです。



以上、南びわ湖駅について書きました。

今回の参議院選挙、果たして 滋賀選挙区では 嘉田前知事と、自民党で現職の二之湯武史氏のどちらが当選するのか、気になるところです。
(もう1人のN国の人は・・・まあ頑張れという感じです)

※2019年7月22日追記※
嘉田前知事が二之湯氏との激戦を制して、初当選を果たしました。



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