※出雲坂根駅に停車中の奥出雲おろち号。(2018年10月、普通列車内から撮影)
木次線の観光トロッコ列車 「奥出雲おろち号」 。
1998年の運行開始以来、毎年4月から11月の毎週金曜・土曜・日曜とゴールデンウィーク、夏休み期間に運転されてきました。
※2021年は4月と5月のみ運転。 6月以降の運転計画は未定。
基本的に 木次~備後落合駅間で1日に1往復しますが、日曜日の備後落合行きは 出雲市駅始発で延長運転されます。
2021年5月27日、「JR西日本が島根県に 奥出雲おろち号の運行を2023年度で終了する方針を伝えた」 と 山陰中央新報などが報じました。
このブログで取り上げたいと思います。
※2021年6月4日追記※
JR西日本が公式ホームページで、おろち号の運行終了について発表しました。
トロッコ列車 「奥出雲おろち号」 の今後の運行計画について (PDF)
【山陰中央新報の記事】
JR西 おろち号23年終了 木次線 老朽化で方針利用促進に影響
【毎日新聞の記事】
観光トロッコ列車 「奥出雲おろち号」 23年度で運行終了へ
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山陰中央新報 および 毎日新聞の記事によると、車両の老朽化が進み、代替車両の確保や新造が難しいことが理由とみられます。
1998年の運行開始時から使う車両3両は、いずれも建造から40年以上経過しており、近年は部品確保が難しくなっていました。
JR西日本が、水面下で沿線自治体の関係者などに方針を説明。
今後、地元自治体と協議し、最終判断します。
JR西日本 米子支社の広報担当者は 取材に対し、「運行見通しについて検討しているのは事実。 最終調整中で、お伝えできることはない」 とコメントしました。
※奥出雲おろち号 20周年特別仕様のヘッドマーク (2018年10月、出雲市駅で撮影)
奥出雲おろち号は、地元(出雲の國・斐伊川サミット)が運行経費を負担しており、ここ10年は年間1300万円を拠出していました。
※Yahoo!ニュース(山陰中央新報)の記事 を参照。
そのため、地元が負担する限り 運行終了はないと思っていましたが、車両の老朽化は避けられない問題です。
おろち号の客車は、「SL北びわこ号」 と同様 12系が使われています。
このSL北びわこ号も、客車の老朽化を理由に運行終了が発表されており、JR西日本が 「これ以上12系を維持できない」 という意思を示したと言えるでしょう。
島根県の丸山知事は、「おろち号は木次線の観光振興の重要な柱。 地元の市、町と協力して運行継続を要望したい」 と述べましたが、老朽化は 要望や費用負担で解決できるものではありません。
代替車両の確保や新造が難しいのであれば、非常に残念ですが 運行終了はやむを得ないと思います。
山陰中央新報の記事によると、JR西日本 米子支社の牧原弘支社長は、2020年11月の記者会見で 「2021年度までは運行できると考えているが、その後は未定」 と発言していました。
早ければ今年度で運行終了する可能性もあったところが、2年延長されたのは良かったです。
※備後落合駅に停車中の普通 宍道行き。(2018年10月撮影)
奥出雲おろち号の運行終了後、地元が費用負担して 後継となる新しい観光列車を導入するという手もあるでしょう。
しかし、コロナでJR西日本の経営が悪化している今、おろち号の運行終了を機に 木次線の存廃問題が浮上してくるのではないかと思います。
木次線 全線の輸送密度(平均通過人員。 1日1キロ当たりの利用者数) は、コロナ前の2019年度で わずか190人/日。
旅客運輸収入は、JR西日本管内 51路線の中で下から3番目なのです。
【データで見るJR西日本2020(PDF)】
区間平均通過人員および旅客運輸収入(2019年度)
木次線と同じく 島根県と広島県を結んでいた 「三江線」 は、輸送密度2ケタ台(2015年度は58人/日)で廃止されています。
【旅客運輸収入のワースト3】
①小野田線 小野田~居能(11.6km)、雀田~長門本山(2.3km)・・・2,000万円/年
②大糸線 南小谷~糸魚川(35.3km)・・・2,200万円/年
③木次線 宍道~備後落合(81.9km)・・・6,200万円/年
中でも、出雲横田~備後落合駅間は 1日にわずか3往復(おろち号を含めると4往復)しか運行されない超閑散区間です。
この区間は 中国地方きっての豪雪地帯ですが、あまりにも本数が少なすぎて 保線するよりもタクシーによる代行輸送の方が安く済むことから、雪が積もると 溶けるまで長期間運休します。
そのため、もはや おろち号のためだけに存続しているといっても過言ではないでしょう。
そのおろち号が運行を終了するということで、いよいよ厳しくなるのではないかと思います。
木次線に関しては いろいろと書きたいことがありますが、長くなるので 今回はこの辺で。
果たして今後どうなっていくのか、注目していきたいと思います。